黒、それはオトナの嗜み
諸君らはどんな色がお好みであろうか?青?赤?それとも黄色?
僕は真っ先に【黒】と答えるだろう。一見地味で後ろめたいイメージが先行するものだが、僕にとって黒は【白】のようなものだと思う。
何よりも暗く、何よりも重い。そして何よりも『お洒落』だ。
もし仮に今時の部屋は白色というイメージがあるのであれば、それはとてももったいない。
白の対は何色か?それはまさしく【黒】だ。
遍く色を塗り替え、数多の色を支える、白のように繊細だ。
グラスに入れたアイス・コーヒーと傍にあるゴディバのダーク・チョコレートクッキーを手に取りながら、パソコンの画面を見つめる。画面の周りはいつも暗闇に満ちている。
『心踊る』という感情に支配されたのは久方ぶりだった。
三種類の黒が周辺の建物を押しのけて、『我こそは』と自己主張しているような風体だった。
濡れたカラスの羽のような黒、プラスティックのような黒、光沢のある黒。一つの黒にも様々な顔がある。一概に黒を黒と断定するのは些か問題な気がする。
などと独りで考えつつ、いそいそと建物の中に入って行った。
僕を迎えたのは、オレンジ色の光だった。
橙色がエントランスを美しく照らしていた。橙色を称えるように、ほんの少しの黒い影がそこにはあった。
ドアを開き、玄関に進んだ。
そこはまさに【黒の領域】だった。いたるところに点在し、部屋の雰囲気を飲み込まない程度に優しくお洒落に、そして力強く存在をアピールしていた。
滑らかで優美、艶がある。例えるのであれば、男・女などと云った二分することを過去に置き去りにしてきた感覚さえある。
僕は身体中から吹き出ようとする心の雄叫びを抑えながら、黒の魔力に導かれるように奥へと進んだ。
木のフローリングと柔らかな黒が奏でるハーモニーは、普段とは違う全く違う音質である。
さながら新郎新婦であり、天井のライトは祝福する神父のようでもあった。
白とは一線を画した、類を見ない空間の趣がそこにはあった。
重厚かつ耽美。これがこの物件の要ではなかろうか。
こちらは少し抑えてワンポイントで存在感をアピールしている。
白い空間と黒いポイントとの素晴らしい調和である。広がりを見せる白の中に浮かび上がる黒に僕は否応なく魅せられていた。
クローゼットは中に黒を仕込んだシンプルかつハイセンスな造り。
ベーシックなスーツをはじめ、カラフルなドレスなどを並べても面白い。
白と黒は主役であり、仇であり、縁の下の力持ちでもある。
しかし、この黒はやはり黒。何色をも飲み込み屈服させる強者の色ーーー無論、僕の考えであるーーー。
もしあなたがこの物件の水場の丁寧な造りを見たとする。感嘆のため息と黒への敬意を表することは間違いない。ライトに照らされ浮かび上がる白の中の淡い黒が、あなたの心身を引き締め、一段上の大人へと変貌させる。
さながら、おとぎ話に出てくる鏡や魔女のようである。
僕も何かに化けることはなかろうかと鏡を覗き込むが、【水場の魔女】は何も答えてはくれなかった。
まるでホテルのBarのような高級感を漂わせている。
食材やそこに立つ人を一気に一流の素材やパティシエへと変貌させる。
足場も広く、悠々と調理ができる。そうだとも、大人のキッチンはこうでなくては。
四分半茹でたパスターーー約250gのカッペリ・ダンジェローーーを手製のスープに投入し、サラダと一緒に誰と食す。なかなかいい塩梅ではないか。
ここまで夢想したら、後は行動に移すのみだ。
そんな主観的なイメージたちと黒の領域から頭を休めるために、一度外の空気を感じるためにバルコニーに出る。梅田に吹く風はいつもエネルギーに満ちている。
ビジネス、観光、その他諸々の、人々の思惑が風に乗って僕に流れ込んでくる。
エネルギッシュで少し高飛車な、だが何かを演じさせられているような。
だからこその黒い領域なのだと思う。
心と体を休めながら、自分を一段階高めてくれる大人の領域。
自然と自分でやりたいことをしようと思わせてくれる、フランソワ・ラブレー。
『汝の意志するところを行え』
これがラブレーとこの部屋のモットーである。
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